バックパッカー旅行記

アトランタで黒人のおばさんにカツアゲされかけた話

久々に海外放浪話の続きを。これはアメリカのアトランタってところに行った時の話。

例のグレイハンドバスでナシュビルからアトランタ駅に着いたのはある日の朝。

アトランタに来た理由は、僕がこの日にザリガニさんとアトランタのバス停で待ち合わせをしていたからだった。ワシントンD.Cを二人で訪れた後、2週間ほど別行動をすることになっていたので、僕らは10日ほどの間だけそれぞれ単独で移動していたのである。

この10日間、僕はラスベガスで一日にして失った10万円を取り戻すべく極貧生活を送っていた。まず、宿にはほぼ泊まることはなくできるだけ深夜バスで寝るようにしていた。食費も1日1000円に抑えていた。それ以下の時もあった。アメリカを出てメキシコに行くまではとことん節約しないと、それだけ先の旅費に影響するとわかっていたからである。

ようやくザリガニさんと再会してメキシコ行きの便が出るマイアミへと向かう目処がたったのは良かったのだけど、ひとつだけ問題があった。

一昨日にダラスをさまよっていた時、たまたまWiFiに接続できたのでノートパソコンでメールを開いたら、知らないアドレスからメールが届いていた。

開いてみると、

「いまロサンゼルスです。グレイハンドバスの便がうまくとれず到着が遅れて◯日の10時になります。すみません。ザリガニより。」とのこと。

ザリガニさんがロスで宿泊している宿のパソコンを使ってメールしてきていたのである。要は到着が予定より2日くらい遅れるという連絡だった。

この時なぜ彼がロスにいたか?それは我々が別行動を始めた際、彼は信じられないことにサンフランシスコに友達が旅行に来ているというたったそれだけの理由でド東海岸のワシントンD.C.から彼方ド西海岸までバスで戻っていったのだった。簡単に聞こえるけどこれアメリカ横断しますからね。4000キロありますからね。ちなみに日本の全長さえ3000キロなのに。ひたすらバスに乗り続けて片道3日はかかる距離です。

西海岸までアメリカ大陸を横断して戻ると聞いた時はとんでもないアホだと思いましたね。

まぁそこは本人の自由。でもそんなチャレンジングなことしてるわけだから到着も遅れちゃったという始末。まあそこも良い。百歩譲って。

ただ気になったのは、

その10時って朝なのか夜なのかどっちよ?ってこと。

もちろんその通りにすぐに返信した。しかし彼は連絡手段を持っていなかったため、結局僕がアトランタに着いた時にもなんの音沙汰もなかった。そしてもうすぐ朝の10時を迎えようとしている。まあ落ち着け、自分。普通は午前も午後もなく10時って書かれたら朝10時のことだよね。夜のことなら22時って書くもんね。

余計な心配をしたことを後悔しながらグレイハウンドのバス停で待っているとようやく朝の10時を回った。ようやく来たか。僕は彼がバスから降りてきたらわかるようにバスの到着所を眺めていた。

そして、ザリガニさんは現れなかった。

うおおおおおーーーい!

10時って夜の22時のことかよ!!!!

と僕は知るのであった。まじであってはいけないことが起こってしまった。

言っておくけど、僕がやっていたのは夏休みのアメリカ観光旅行ではない。ただのバックパッカー、つまり貧乏な放浪者。もう、ホームレスみたいなもんである。20キロを超える荷物を背負いながら、アトランタのオリンピック記念館で高い金を払ってはしゃぐなんてことはできないし、するつもりもない。

というわけで真夏のアトランタで12時間も野外で待つ羽目になった。

しかたなくバス停を出て、あてもなくアトランタの街を歩いてみた。でもアトランタってニューヨークみたいに街が密集しているわけでもないただのだだっ広い街。面白いものなんて何にも無い。

おまけに地図も無い。というかもう暑すぎてあっちこっちと探しながら観光する気力もなかった。無駄に方位磁石を持っていたので、バス停の方向だけはわかるように徒歩圏内で街を散策する。

そうこうしているうちに陽が昇って来てさらにさらに気温が上がる。もう暑いし腹減ったしでもはや絶望感でいっぱいになったので結局散策は諦めて木陰で休憩。そこらでマウンテンデューを一本買って、バックパックに入ってたリンゴを食べる。

もはやグレイハウンドのバス停がある建物で待っていたほうが、まだ暑さをしのげる。と思ったので、ちょくちょく休憩しながら少しずつ歩いてバス停方面へ戻った。

ようやくバス停周辺に戻ってきた頃にはすでに午後15時あたりを回っていた気がする。やっとここまで戻って来れたわー。と思いながら歩いていると、目の前にすごい光景が飛んで来た。

なにやら知らんけど、駅近くのロータリーのベンチに数十人の黒人達がたむろってダベっているではありませんか。もう何ていうか、遠目からみるとエリア一面黒くなっちゃてるくらい。 アトランタって黒人の街なの?

こいつはアカン、あそこ通ったら絶対絡まれる。

と本能で感じたので、急遽、脇道に逸れて歩くことにした。

脇道を歩きながらなおバス停方面に向かって歩いていると、後に気配を感じたのでふと見てみると、今度はキョーレツな雰囲気を醸し出した巨体の黒人のおばさんが現れた。

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/57/a1d4030fb73a357a1ed1e23d81640042.jpg

だいぶ違うけどフォルムはこんな感じ。歩くだけでハアハア吐息が聞こえちゃうレベルの人ね。

そして振り向いて目が合った途端におばさんが話しかけてきた。

僕になんの用があるはずもないのになにやらペラペラと話を続けてくるのだが、悲しいことにおばさんが何を言ってるのかがさっぱりわからない。あれ?スワヒリ語かなんかしゃべってる?

この時の自分は英語なんてほぼ話せないに等しかったが、曲がりなりにも人並みに勉強して大学生をやっていたわけで、ここまで相手の英語がわからないことは初めてだった。いま思えば、おそらくコテコテの黒人訛りの英語だったんだろう。

おばさんが何言ってるかさっぱりわからなかったけど、なんとなく分かってる風に合わせた。どうせ大した話じゃないだろうし。

「YES, YES」とかテキトーにうなずいたりしてみてね。日本人が外国人に対してよくやる典型的なやつである。でもアレって仕方ないよね。そもそもアメリカ人みたいなネイティブってこっちが英語分かって当然みたいに思ってるから「相手がわかりやすいように」話す工夫をか全くない。なんでゆっくりしゃべるとかしないんだろうね?もしかしてバカなのかな?

っとまあ心ない事を考えていたわけなのだが、実はこの直後、最もバカなのは自分自身であったということ思い知るのであった。

おばさんが何を言ってるのかほとんど分からなかったけど、それでも少しづつ会話は成り立ってきていた。なんとなく把握したところだと、どうやらおばさんはすぐそこのコンビニまで行くところらしく、「お前さんも一緒に来てなんか買ったらどうだい?」みたいなことを言っている。

見ず知らずの僕をわざわざコンビニに誘うものか?という疑問はあったけどまあ時間はまだまだある。長時間歩いてノドも乾いたしお金は使いたくないけどジュースくらいは買ってもいいや。と感じで、そのままおばさんと並んでコンビニへと向かったのである。

コンビニはすぐそこだった。コンビニといっても日本のそれとは違って個人で経営しているいわゆる売店みたいなミニショップである。おばさんに続いて中に入るとすぐ横にレジが見えた。檻みたいな鉄格子で覆われているタイプのレジで、檻の中には20代後半のアメリカ人らしき男店員がいる。

このタイプのレジは治安の良い日本ではまず見られないけど、実はアメリカでは別に珍しいものではない。強盗に襲われないように店員が柵で守られている。お客さんがお金を払う時は格子の隙間からお金を渡すシステムである。

そもそも遠目で見たあのガラ悪い黒人たちが来るような地域のコンビニである。これくらいセキュリティ対策がほどこされていても別に驚きはない。

黒人のおばさんは店内に入るとすぐに、入り口付近に設置してあるアイスボックスみたいなやつを開けて物色しはじめた。

僕はジュースを買うつもりだったので、コンビニの奥にある冷蔵庫までジュースを取りに行った。コーラのペットボトルを1本つかんでレジに向かった。

レジの店員さんにコーラを買うことを伝えてHow much?と聞いてから財布からお金を出そうとしていると、アイスボックスにいたおばさんが近づいてきた。

おばさんが手に持っているのはコップは、先にお金を払ってドリンクバーみたいなやつでセルフでジュースを入れるやつだった。

コップを片手に僕に言ってきた言葉は、

「じゃあ、私コレで。」

は?

よくわかりません。みたいな顔をしていると、

「だから、私はコレで。」(2回目)

はい?

いやいや、完全におかしいでしょ。

なんで俺が買うのに便乗してアンタのも一緒に買わなきゃいけないのよ。店員の男もポカンとしている。

あれっ?もしかしてそういうアメリカンジョーク?冗談の可能性もあるので、僕はただ笑って「ノー!ノー!」と答えた。

するとおばさんの顔色が急に変えて大声をあげた。

おばさん:「何言ってんの!あなたさっき買ってくれるって言ったじゃない!」

僕:「ええーー!どういうことですかーー?!」

つまり、こういうことである。このコンビニに来るまでに二人で歩きながら話していた会話がこうだった。

おばさん:「あー、暑いからめっちゃ喉渇いちゃったわぁ。ちょっとそこのあんた、そこのコンビニでさぁ、あたいにジュース買ってくんない?」

僕:「(よくわからないからノリノリで)YES!YES!」

うわああ、やってしまったああ。俺そう言ってたんだぁ。ぜんっぜんっわかんなかった。

何言ってるかわかんないからイエスって言っちゃった・・。すごく軽快なノリでイエス出しちゃった・・。

でも、俺良いって言っちゃったんだもんね。仕方ない。やっぱここは黙ってお金だして買ってあげる、、

ワケねぇだろ?

いや普通におかしくね?ジュースは買ってもらえませんから。

全く知らない赤の他人にいきなり話しかけて、

「こんにちは。今日は暑いですね。ちょっと私にジュース買ってくれませんか?」

「イエスイエス!」

ってなるやつ、どこの世界にいるんですか?それがアメリカなんですか?

と、言いたい事はいっぱいあったが、ここは全く知らないアトランタという地である。揉め事は御免だ。僕は全力で弁解した。勘違いさせたことを謝った。もしかしたらさっきそういう風に思わせてしまったのかもしれないけど、それは僕が英語がわからなかったからなんだ。ごめんなさい。学生で貧乏旅行している身なので、あなたにジュースを奢ることはできないんです。と。

しかし怒れるおばさんには全くもって響かなかった。彼女は鳴り止まない。

おばさん:「冗談じゃないわよ!買うって言ったんだから約束通り私にジュース買いなさいよね!!」

いよいよおかしなことになってきたぞ。というか誰が見てもおかしなやりとりである。

ありがたいことにレジの店員が見るに見かねて僕に助け舟を出してくれた。

店員:「君、ジュース買ってあげるなんて言っての?」

僕:「いや言ってないです。。」

おばさん:「いや!あなたは言ったわよ!私にジュースを買うって言ったのよ!」

どうみてもこのおばさんが狂っているのは明白だった。ていうかおばさん声デカすぎるよ・・。キレすぎだよ・・。てか迫力がやばいよ。

店員は僕が完全にカモられそうになっているという状況を把握してくたようで、そこからは僕側に回ってくれた。

そしてあろうことか、そのまま店員とおばさんがバトルモードに突入する。

ラウンド2。ファイッ。

店員:「だからこいつは買うなんて言ってないんだよ!」

おばさん:「言ったのよ!この日本人は嘘つきなのよ!」

店員:「知らねーよ!もうお前でてけ!」

おばさん:「キイイイイイイイィエエエエ!!」

店員:「警察呼ぶぞ!」

こんな感じのやりとりがしばらく続いた。。

店員に出てけと連呼されると、ついにおばさんゴチャゴチャと言いながら手にもっている紙コップを店員に投げつけた。

紙コップが跳ね返って地面に転がる。

店員:「このBitchが!!!(クソババア的な)」

店員が吐き捨てると同時に、おばさんはコンビニから外へ出て行った。

いや、まじで怖いわアメリカ。

もう日本人的にはツッコミどころが多すぎてワケがわからなかった。

まず知らない人にジュース買わせようとしないしね。仮にそれをしたとして相手に断られて逆ギレしないしね。ましてや店員にまで言われてんのにさらにその店員につっかかるなんで、ジャインアンかよ。って思いましたね。いや、ジャイアンでもそんなことしないか。

でも、ひとまず僕は救われた。この店員さんが僕を救ってくれた。

僕は店員さんに精一杯の感謝をつたない英語で伝えた。そして店員さんも「あいつ頭おかしいよな。君ももっと気をつけるんだよ。」と励ましてくれた。ありがたい。

うん。やっぱりアメリカのせいではないな。まともな人もいるもんだ。

そう思えるとだいぶ安心した。

ひとしきり彼にお礼を伝え、コーラを片手に僕はお店の外に出た。

よし。バス停まで言って夜までザリガニさんを待つ事にするか。そう思い歩き出した。

すると目の前に、なんとさっきの黒人おばさんが再登場。

おばさんはさっきのアレでは腹の虫が収まらず、僕が店が出てくるのを待ち構えていたのだ。

やっべええええ。オワタアアアアア。もう味方いねぇぇ。

僕はもはや立ちすくんだ。

そしてラウンド3が始まる。ファイッ。

おばさん:「あんたねぇ!よくも騙してくれたわ!だだで済むと思うなよ!」

もう何言ってるかわからなかった。というか何で怒られてるのかもさっぱり分からなかった。

無視して逃げよう、そうしよう。僕は決断した。

しかし、僕が無視をして歩き始めるとなんとおばさんはついてくるではありませんか。

怒鳴りながら、わめきながら、僕の後ろをついてくる

やばいこの人、完全にぶっ飛んでる。

もうダメだ・・。

僕はあきらめた。

僕は足を止めて大きく息を吸い込み、振り返った。

そして言った。

うるせぇんだよクソババア!!!!!

ぶち殺すぞコラァ!!!!!!

夏の夕暮れ時、アトランタのバス駅前に僕の声が鳴り響いた。

僕の日本語が。

いまでもはっきりと覚えている。

僕はバリバリの母国語で黒人のおばさんを恫喝した。

それまで子犬みたいに震えていた日本人の男の子がいきなり目を血走らせてわけわからん言葉で怒鳴りちらしたもんだったから、黒人のおばさんは目をまんまるにして驚き、そして黙ったのであった。そのあと僕についてくることはもうなかった。

そして、このおばさんとの戦争はようやく終わり迎えたのである。

まあ、要するに僕はブチ切れたのである。でも別に悪いとは思っていない。

だって仕方ない。

全米が首を傾げるレベルの絡み方してきておいて、それでいてなおもまだキレる。

誰がテメェみてえな見ず知らずの黒ブタにジュース奢るかよ。

寝言は寝て言えよクソババアが。日本人ナメんなよ。

なんてことは決して思ってません。

いくらなんでもそんな物騒な事は思いませんよ。

いや、思ったわ。

てかそう思うだろ普通。

とにかくこれで災難は去った。

僕がその足でグレイハウンドバスの駅構内に入ろうとすると外にいたスタッフに制止された。

スタッフ:「なんだ君?いまそこで喧嘩してなかったか?揉め事起こす人は入れないよ。」

一難去ってまた一難。

僕は再びつたない英語で、揉め事を起こしたのは僕じゃなくてあのクソババアなんだってことを一生懸命説明した。スタッフは理解してくれた。僕の英語力がまた一つアップした。

バス駅構内に入れたのはよかったものの、時計を見るとまだ16時にもなっていなかった。ザリガニさんがここに到着するのは夜の22時だ。ここからさらに6時間。

でも何して待とう?

何をして待ったかはもう忘れた。

ただ、その夜僕は無事にザリガニさんとアトランタで再会するのであった。

おしまい。

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ヘンピな国で派遣社員として働きながらブログ書いてます。体重95キロから筋トレダイエットで14kg痩せたら行動力が倍増したので副業に注力中。30代が健康と収入面で幸せになれるコツをしぼりだします。最近脱メタボしました。副収入は約13万円。